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ファースト・オービターズ

こんにちは!TDSC高橋です。
三月も中ごろを過ぎて、三寒四温から一寒六温くらいになってきたような気もします。
同時に花粉という悪魔も襲来してきていますが、どうせマスクはデフォルト装備になっているのもあり例年ほどの『花粉感』はないかもしれません。

というところで今月のエッセイですが、余り季節ネタと人工衛星が上手く絡まないというところもあり…🤔
最近僕が気になって調べたことについて簡単に書き記していきたいと思います。

ヴァンガード1号 – 無限のエネルギーを得た初めての人工衛星

1958年3月17日に打ち上げられた、ヴァンガード1号という人工衛星をご存知でしょうか。
ちょうど先日で63年、ということになります。

ヴァンガード1号は、世界で4機目に地球軌道にのったアメリカの人工衛星です。
球形の本体に6本の細い棒状のアンテナが刺さった、とげの少ないウニのような見た目をしており、直径165mmに1,47kgと、なんとなく想像する人工衛星より小さい気がします。

さて、このヴァンガード1号くんですが、現在の人工衛星では当たり前となった、とある機構を搭載した初の人工衛星でした。

それが、『太陽光電池パネル』です。

人工衛星は燃料を積んで地球を飛び出しますが、その燃料は宇宙で補給することが難しく、主に姿勢制御や軌道修正などのみに使い燃料を節約します。
そのため、人工衛星としての機能…例えば通信や測量、観測などに使うエネルギーはどこから捻出するかといえば、この太陽光電池パネルを利用した電力によって賄われています。
太陽光電池パネルであれば、太陽というほぼ無限ともいえる物体からのエネルギーを電力に変換することができるため、電力不足を気にすることなく長時間の活動を可能としています。

ヴァンガード1号以前に打ち上げられた世界初の人工衛星スプートニク1号は電力源として電池を搭載していたため、寿命は数週間とそこまで長くなく、その上電池の重さが人工衛星全体の重量の多くを占めていました。
しかしこのヴァンガード1号は6年以上という長時間にわたり地球へと信号を送り続け、その軌道データから地球が完全に円形ではなく、洋ナシ形をしている等の貴重なデータを残しました。

「ヴァンガード(Vanguard)」という言葉は、『先駆者』というような意味で良く使われます。
語源はフランス語の「アヴァンギャルド」、という話をどこかで聞いたことがあるような覚えがありますが、そちらも前衛的な○○という意味で日本でも良く聞く言葉です。
この人工衛星は、打ち上げ順でいえば4番目ではありますが、『太陽光電池パネル』という現在の人工衛星には欠かせないパーツを初めて搭載し、人工衛星は使い捨てでなく長期間稼働しデータを送り続けられるものなのだ…
という、『先駆者』になった人工衛星として、正しく相応しい名前かもしれませんね。

ちなみにこのヴァンガード1号くんは、2013年の時点でも地球周回軌道を維持していたとか。
勿論運用は終了していますが、僕たちが見上げた宇宙の、そのどこかで未だに地球の周りを回って見守っているのかもしれないと思うと…
なんだかロマンですね。

スプートニク2号 – 世界初の乗り物、としての人工衛星

先ほど少し名前が出た、世界初の人工衛星スプートニク1号。ソビエト連邦が1957年に打ち上げたものですが、その次に打ち上げた人工衛星、『スプートニク2号』もある「世界初」を持っています。

Sputnik-2 model

国際宇宙ステーション、スペースシャトル、宇宙旅行計画…人間が宇宙へと飛び出すのは、話題にはなれども珍しいものではなくなってきています。
人類で初めて宇宙飛行をしたのは1961年のユーリ・ガガーリン(「地球は青かった」の人ですね)です。
彼が有人宇宙飛行を安全に行うために、様々な計算が行われたことは想像に難くないですが…
その礎になったともいえるのが、スプートニク2号でした。

ライカ犬といえば、地球軌道を周回した初の動物として有名です。
このライカ犬が搭乗したのこそ、このスプートニク2号であり、人工衛星にして初の宇宙船と呼ぶべきものかもしれません。
『ライカ』または『ライカ犬』という名前で知られる彼女ですが、当初は『クドリャフカ』という名前で呼ばれていたとも。
元々再突入(=地球に帰れる)できるようには設計されていないスプートニク2号でしたが、断熱に問題が発生し打ち上げ数時間後には線内温度40度に達し、その影響で生き長らえなかったと考えられています。


ライカ…ないしクドリャフカは、無重力となった船内をどう思いながら過ごしていたのか…
思いに馳せてしまいます😌


Hubble ultra deep field

宇宙は日の当たる場所は灼熱、逆に当たらない場所は極寒という、見た目の美しさや穏やかさに反して地球上のどんな場所よりも過酷な環境です。
その上、地球上の生物にとって何よりも必要な大気もありません。
弾道飛行ではなく地球軌道にのった初の生物という名誉と、人間の技術の進歩や発展に寄与した犠牲、という側面がありますが… ただ「すごい犬だ」、「かなしい、この犬のことを忘れてはいけない」と思うのでなく、 彼女が何を成すべきとして宇宙へと飛び立ったのか、そして何を成したのか、という方向にも目を向けたいですね。


現在は多くの人工衛星が地球の周りを飛び交い、そして国際宇宙ステーションや宇宙旅行も既に夢物語ではない…という時代になっています。
60年前にはヴァンガード1号やスプートニク2号のような出来事があったと思うと、更に加速しながら宇宙開発も進んでいくのかもしれません。

衛星事業に関わるようになってから、自然と夜空を見上げることが多くなりました。
僕の肉眼では、自分の関わる衛星を見ることは叶いませんが…なんとなく、そこにあることを意識しながら生きてしまいますね。いつか宇宙に行ったら、この目で見てみたいなあ…

参考資料

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